年金受給者の方が「ふるさと納税」を行う場合の注意点は? 給与・不動産がある場合も含めて解説

年金受給者の方のふるさと納税

そもそも「ふるさと納税」とは?

ふるさと納税とは、自分の生まれ育った故郷だけでなく、応援したい地方自治体に寄付を行う制度のことです。

ふるさと納税を行うと、合計寄付額から2,000円を差し引いた金額が所得税と住民税で控除されるだけでなく、返礼品という形でその土地の名産品などを受け取ることができます

詳しくは下記サイトをご覧ください。

 関連記事:「ふるさと納税とは?どんな仕組みでどんなメリットがあるの?」

年金受給者の方でもふるさと納税は可能

ふるさと納税は、納税者の方なら誰でも行うことができます。

もちろん、年金受給者の方でも可能です。

ただし、いくつか注意点があります

年金所得のみの場合の注意点:「年金受給額 = 所得」ではない

国民年金、厚生年金、共済年金、iDecoによる老齢給付金など公的年金等だけが収入となっている方の場合、「収入額」と「所得額」が違うことを念頭に置かなくてはなりません

公的年金等の所得額(雑所得に区分)は、次の計算式により計算されます。

公的年金等の雑所得の金額=公的年金等の収入額の合計額×一定(※)割合-一定(※)控除額

※所得税法第35条第4項で定められています。

詳しくは公的年金等の課税関係(国税庁HP)をご覧ください。

ここで2つの点に注意する必要があります

ふるさと納税注意点

【注意1】 公的年金等の収入額の合計額が一定額以下ならふるさと納税の節税メリットはない

次の方の場合、ふるさと納税をしても節税によるメリットを受けられません

65歳未満の方で公的年金等の受給額が105万円以下の方

65歳以上の方で公的年金等の受給額が155万円以下の方

なぜ節税のメリットがないかというと、そもそも納めるべき所得税額も住民税額も0円だからです(※)。

支払うべき金額がないのですから、税金の節約のしようがありません。

※所得税だけで考えた場合、65歳未満の方は受給額が108万円以下、65歳以上の方は受給額が158万円以下で納税額0円となります。

【注意2】 「注意1」以外でもいくら寄付すべきかを考えたほうがいい

また、「注意1」以外であっても、いくら寄付すべきかを事前に考えたほうがよいのです。

寄付をする場合には、自身の納税額とともに、寄付の上限額(おおよそ所得額の)納めるべき税金の額より寄付金額が上回ると節税効果を適度に受けられる以上に寄付することになります。

また、寄付控除が受けられる寄附金額にも上限があります

上限額を超えて寄付すれば、返礼品を高い金額で購入したのと同じことになります

では、寄付の上限額はいくらになるのでしょうか。

一般的には、「住民税の所得割額の2割が寄付上限額の目安」と言われています。

ただし、これはあくまでもざっくりとした目安であり、正確に計算するともう少し増えることがあります。

また、社会保険料や扶養家族の人数などで上限額は変動します。

詳しく調べたい場合、下記サイトでシミュレーションしてみるとよいでしょう。

シミュレーター(ふるさと納税の達人)

 関連記事:「ふるさと納税、いくら払うと損する?」

年金所得のみの場合、平均以上の年金収入がないとトクしない?

平均以上の年金収入がないとトクしない?

サラリーマンとして働いてきた方の老齢年金の受給額は平均で16万5,450円(平成26年度・男性平均)。

年額だと198万5,400円となり、200万円近い金額となります。

65歳未満の方の雑所得として計算すると、

198万5,400円 × 75% - 37万5,000円 = 111万4,050円

この場合、ふるさと納税で節税メリットを享受できる寄付金額はいくらになるでしょうか。

北区在住だとすると住民税所得割額が7万5,800円。

「住民税所得割額の2割程度」でざっくり計算すると寄付上限額は1万5,000円前後となります

しかし先ほどご紹介した「ふるさと納税、いくら払うと損する?」に掲載された計算式で試算すると、寄付上限額は1万9,800円前後となります。

住民税の所得割額はふるさと納税の上限額と連動するだけでなく、年収に比例することが多い要素です。

つまり、年金収入が多ければ多いほど節税メリットを享受できる寄付金額は増えていきます

逆に、受給額が平均あるいはそれ以上多くないとふるさと納税ではトクにはならないかもしれません

年金受給額が多いとワンストップ特例が利用できない

ふるさと納税の寄附金控除を行うには、通常確定申告を行わなければいけません。

しかし、次の両方の要件を満たす場合には、ワンストップ特例を行うことで確定申告を省略することができます

【要件】

1.寄付先の自治体が5団体以下であること

2.ふるさと納税がなければ確定申告をする必要がない

2.に関しては、年金受給者の場合、公的年金等の受給額の合計額が400万円以下であり、かつ、これらの公的年金等がすべて源泉徴収の対象となっていれば、確定申告はしなくてよいことになります。

ただし、公的年金等以外に副業収入がある、あるいは医療費控除などで確定申告をする必要があるならワンストップ特例は使えません

これらの申告とあわせてふるさと納税も確定申告で寄附金控除を行う必要があります。

詳しくは下記サイトをご覧ください。

 関連記事:「ふるさと納税のワンストップ特例ってなに?」

ワンストップ特例にも注意

年金所得と給与所得がある場合

公的年金等による雑所得のほかに給与所得があってもふるさと納税は利用できます。

ただし、この場合、両方の所得を合算したうえで、ふるさと納税の寄付可能上限額を検討する必要があります。

また、公的年金等による雑所得と給与所得の両方がある場合、ワンストップ特例は利用できません

ふるさと納税がなくても確定申告をしなくてはならないからです(※)。

※厳密にいうと、どちらか一方の所得が20万円以下ならば所得税法上では確定申告が不要です。

しかし住民税ではどちらか一方の所得が20万円以下であっても確定申告をしなくてはならず、その時点でワンストップ特例は使えないことになります。

そのため、年金収入と給与収入の両方があるなら最初から確定申告をするとした方がベターです。

年金収入と不動産所得がある場合

公的年金等による雑所得のほかに不動産所得がある場合もふるさと納税は利用できます

この場合も、両方を合算したうえで、ふるさと納税の寄付可能上限額を検討する必要があります。

また、不動産所得がある場合、ふるさと納税をしていなくても確定申告をしなくてはなりません。

そのため、不動産所得がある場合には、最初からワンストップ特例を利用できないことになります。

最後に

繰り返しになりますが、年金収入が確定申告不要な金額しかなくても、医療費控除や雑損控除が生じた場合には、確定申告が必要です。

つまり、ワンストップ特例は利用できないこととなりますので注意しましょう。

執筆者:税理士 鈴木まゆ子
税理士、心理セラピスト。
2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。現在、外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、数字に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、経済的DVにまつわる心理についても独自に研究している。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「税理士がつぶやくおカネのカラクリ」